2021.08.29
花摘 / writer
最初の出会いは、学習塾の撮影会だった。
集まってきた勉強のできる真面目な中学3年生たちに、
あろうことか斉藤さんはバリバリのタメ口で、
なんなら机に腰掛けて(!)取材していた。
「へえ〜そうなんだ! スゲ〜!」レベルの馴れ馴れしさで。
私はそれを見て度肝を抜かれた。
これまで私がやってきたインタビューとあまりにも違う。
たとえ相手が中学生だろうと、取材相手にはまず敬語を使い
丁重に接するのがマナーではないのか。
しかし。
完成した媒体を読むかぎり、斉藤さんのやり方は
間違っていないようだ。だって取材された中学生たちの
弾むような声が聞こえてきそうだから。
次に、初めて仕事の打ち合わせでJINのオフィスに
行ったときのこと。ほぼ「はじめまして」なのに。
私の発言に対してちょいちょい
「いや、そういうことじゃないです」
「僕の考えは違う」
と否定してくる。
少しくらいの違和感は流すのが
大人というものではないのか?最初にこの洗礼を受けた
おかげで(せいで?)「この人は全方位ホンネだ」と
早々に悟ることとなる。
こんなふうに第一印象まあまあ悪めなスタートなのに、
なぜ私は今でも斉藤さんと仕事をしているのか。
正直なところ、答えはわからない。
でもここだけの話、彼は案外きっちりしている。
約束は必ず守る。時間に正確。ケチではない。
ちょっと優しいところもある。さらにデザインの仕上がりは
ハッキリ言ってかっこいい。
素っ気ないけど言葉の端々に愛がある。
夢中になってクライアントさんを喜ばせ、気づいたら
友だちどころか家族みたいになっている。オンもオフも関係ない。
ずっと仕事しているみたいだし、ずっと遊んでいるみたい。
でもそれだけで、すべての「ちょっとおかしい」を
チャラにできるだろうか? いやできない。
今日だってリモートで打ち合わせしていたら、
唐突にノートパソコンを持ったまま歩き出した。
画面が揺れまくり、こっちは酔いそうになる…。
来客かな? いったん切ろうかな?と思ってたのに、
なんと彼は冷蔵庫の缶ビールを取りに行っただけだった!
たまげましたね。何も言わずにプシュって開けて飲んでるし。
気を使ってソンした。まあ、暑かったしね。私も飲みたかったけどね。
なぜ私はこのような人とこれから先も一緒に仕事をしようと思ってしまうのか。
わからない。だれか教えて。
ただ、はっきりしていることもある。
出会ったばかりの人には「何屋だかわからない」と言われがちらしいが、
得体が知れないからこそむしろ私にはわかりやすい。
うさん臭いのと同時に透明性がある。バラバラに見せかけて、
じつは一貫している。ん? ますますわからなくなってきた。
JINのコンセプトは「STAFF FIRST」。
まずスタッフがワクワク楽しめること。チームとして働く
クリエイターたちが誰よりも「仕事を楽しむ」。その仕事を
作り出すのがJINの役目。その結果、携わる人すべてが
Happyになる。だから最終的にはクライアントさんに感動を
与えることができる。
斎藤さんは、これをそのまま実行している。
制約というものがない。だから世の中の概念や常識に
とらわれないアイデアが浮かぶのかも。
斉藤さんそのものが、JINのショールームみたいだ。
あれ!?結局いい感じに書いちゃってるじゃん。
悔しいけど。気付いたら、JINと出会ってからの
私は仕事を楽しんでいる。まんまとやられている。
ライター 花摘