あと味 | デザインとブランディングを相談できる。株式会社JIN | 藤沢

2022.04.07

あと味

斉藤高広 / director

斉藤高広 / director

「あと味」

平和な国にいると肉でも魚でも野菜でも、いつでも好きなものを頂ける。だけど、ある程度の年齢になってきたもんで、その味そのものよりも、「あと味」の方が気になる。添加物がたくさん入っているようなFOODであればその時は美味しくても後々気持ちがよくないし、おいしいものを出されて、ヤッホーとあるだけ食べてしまったら、まんぷくすぎてつらいからね。仕事柄もあっていろいろなお店に遊びに行くけど、あと味の良さを考えたら一番しっくりくるのはコース料理。プロの方が、美味しいものを品の良い配分で、いい時間の中で提供してくれるからだ。

あと味が良いと、あぁ、うまかったなぁとか、楽しかったなぁと余韻も含めて、ながい時間幸せな気持ちを味わえるもの。それは、ごはんに限ったことではなくエンタメでもそうだ。最近みた映画で、あと味がよかったNO1が『Codaあいのうた』だ。障がい者のご家族の話なんだけど、タイトルからして、ほわほわしたよくある普通のいい話なんだろうなと思っていたらどっこい、いい意味で裏切られた。

確かにめっちゃいい話で、泣きましたよ。何度も。だけどさ、その涙の心地の良さったらないよ。この映画は。よくあるいい話系映画あるあるだと、あぁ、そろそろこの辺で泣かせにくるなっていうフラグがあって、そしてハンカチを準備したりする。そういう、つくりての演出みたいなものが見え隠れすると、楽しみが半減しちゃうんだよね。

苦労話でもなく、人が亡くなるような話でもない。一つひとつ差し出されるシーンに素敵なユーモアと味わいがあって、時にいい音楽や、チャーミングなHなシーンとか、超えなきゃいけない深い家族の課題とかいろいろなものごとが、じわじわとエンディングに向けてちょうどいい具合に差し出される、品のよいフルコースだった。お見事な演出。

映画館を出た帰り道のあと味を、なんと表現すればいいのだろう。スカッとしたでもないし、こころが熱くなったとかでもないし。うまいこと言葉が見つからないんだけど、頭に浮かんだ一つは、今、ご近所同士で喧嘩したりしていたらダメだよなぁ、かな。『Codaあいのうた』、記憶に残る、ずっと好きな映画の一つになりそう。

ではまた☆

斉藤高広