2022.03.25
斉藤高広 / director
通いたくなる、塾のデザイン。|2:内装デザイン編
そういえば塾に行くときって、ゆううつだったなぁ。事務所みたいなあじけのない白い部屋にホワイトボードがあって、「さぁこれから勉強しましょう」っていう空気にどうもなじめなくて。今日もおなかが痛いってことにしてサボって、ファミマでファミチキでも食って時間がきたらこっそりうちに帰ろうか、なんて。
学習塾の内装デザインを担当しました。完成しちゃったけど、どんな感じにしようかなぁと、考えるところから出来上がるまでずっと楽しかった。オーナーさんがテーマとしていたのは「Innovation」。それぞれの生徒さんに心地のよい刺激を与えるような、そんな、空間をイメージされていました。それをカタチにするのが僕たちの仕事だ。
「テーマ」って本当に大事だ。ただおしゃれにしたいとか、何々風にしたいとかもいいけど、「だれに、どんなインパクトを与えたいか」っていう明確な意味みたいなものがあると、つくるものがデザインではなくコミュニケーションになる。なにかをつくるという点では同じなのに、全くの別物なんですよね。
一つのお店をつくるには、僕のようなディレクターとか、グラフィックデザイナーや大工、職人さんなど、いろいろなジャンルの技術も知識もキャラクターも違う人達が絡むんだけど、それぞれの人とまず共有することって、指示書や図面じゃなくてテーマだ。これがないと、そのチームは完全な縦社会になって、決められたことを決められた通りにすることがゴールになっちゃうんだ。
一番偉いのはお施主様でなく、現場の監督でもない。そのテーマの主人公である、塾に通う子どもたちだ。彼らを喜ばすことが僕たちの仕事のゴールなんだよね。この間なんかさ、マーケティングの案件でクライアントの年配の会長さんに「僕らが喜ばす相手はあなたじゃくてあなたのお客さんです」ってプレゼンしたらその会社を出禁になったけどね。
デザインは、カフェとかショップのような開かれたイメージ。その時のテンションで選ぶ、集中デスク、超集中デスク、友達なんかとリラックスしながら学ぶデスクは大工さんの手づくり。トイレスぺ―スの入口は忍者小屋のように壁に隠してみたり、シンプルでスタイリッシュなガラスコーティングされたホワイトボード。圧倒的な存在感のある一面フェイクグリーンで覆った壁にはSteve Jobsの名言を。電球色と温白色をミックスしたやさしい光、オーナーさんがセレクトした本を置くライブラリースペースなどなど。通いたくなる学習塾、完成しましたよー。小さいころ、近くにこんな塾があったらよかったなぁ。
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